特許庁審判官、審査官、東京都立大学(首都大学東京)法科大学院教授などを経て、現在、トムソンブランディ顧問も務める弁理士・工藤莞司先生が、商標界で最近話題のトピックを鋭い視点から読み解きます。
第5回 わが国偽ブランド事件の昨今
=「シャネル」や「ヴィトン」に弱い消費者=
偽ブランド事件は相変わらずである。隣国ではなくてわが国で生じている問題である。
新聞情報等でも、次の通りで、少なくはない。
○『「CCマーク」掲げたバー元経営者を逮捕 商標法違反容疑』(09.1.21読売)
○「韓国が引き渡し容疑者の男逮捕 偽ブランド密輸」(09.8.20読売)
○「シャネルの偽バックを販売 商標法違反逮捕」(09.8.29産経)」
○「乗客に偽ルイ・ヴィトン販売=容疑でタクシー運転手逮捕」(10.1.26時事)
○「偽ルイ・ヴィトン販売=自宅で161点所持-容疑で会社員男逮捕」(10.3.11時事)
○「偽ブランド品:許しまへん 大阪税関、破棄作業を公開」(10.4.21毎日)
○「露店に偽ヴィトン、社員は騙せません」(10.5.24読売)
わが国の舶来品崇拝やブランド指向は、明治の開国以来変わりようがないのであろうか。これを利用した偽ブランド品は絶えることなく出回り、しかも巧妙を極めていると言われる。
製品は精巧に出来ていて、本社へ送って検査をしないと真贋の見分けが付かないバック等も多く、安かろう悪かろうの時代は疾うに過ぎて、偽ブランド品を承知で購入し、身に付け、持ち歩いて高級品の雰囲気を楽しんでいる若者も存在するらしい。また、パチンコの景品にも利用されたという裁判例もある。
商標権侵害の刑事罰は、故意(登録商標の存在及びその類似範囲の使用を認識)による侵害行為で、商標権者の告訴がなくとも公訴できる非親告罪である(商標法78条、78条の2)。
例えば、警察は路上での偽ブランド品の販売、すなわち商標権侵害行為については、そのまま逮捕して起訴できる法構成となっている。偽ブランド品による出所の混同は需要者を惑わせて、公益に反するからである。
最近の知的財産権の保護の強化に伴い、刑事罰の懲役刑や罰金刑の上限が引き上げられた外、その併科も可能とされている。従来は、初犯は罰金刑だけで、再犯を誘発しているとの批判に応えたものであろう。
また、摘発の場面でも、 現場で真贋を判定して現行犯逮捕に結びつけるため、2004年末から、警視庁管内では、「予備鑑定員制度」、ブランド刑事が配置されている。
担当刑事は各ブランドメーカーから講習を受けた者である。
こうした中でも、偽ブランド事件は依然として減らないが、少し変化の様相がある。
隣国から偽ブランド品が輸入され、そして地方へと拡散し、またわが国著名登録商標が偽ブランド品の対象となったものもある(「偽ソニー製品販売:研修生、容疑で逮捕・・・」09.9.27毎日地方版)。
このような偽ブランド品はわが国から他国へ輸出されることが多い。そのため、2008年の商標法の改正では、商標の使用に、「輸出」行為が加えられて、刑事罰の対象とされた。
しかし、法改正だけでは根絶や減少は難しい。消費者側の身近な心構えとしては、偽ブランド品の購入は商標権侵害罪という犯罪行為に関与し、助長になるとの自覚が必要と思われる。