知財専門家としてバンコクに長期滞在し、タイ国内やベトナムの各地で知財セミナーを開催したユニークな経歴を持つ。東南アジア暮らしもすっかり板についた2005年春に帰国、都内に商標専門事務所を開設。
「常夏の国もよかったけれど、やっぱり日本はいいねえ。
過ごしやすいし、モノもサービスも豊富だし。」と日本のよさを満喫中。
豊崎国際特許商標事務所
豊崎玲子 http://toyosakiassociates.web.infoseek.co.jp/Home_Japan.htm
第2回 効率的にスクリーニングを行う
今回のTIPsは、アルファブランディーで、簡単・手早く・効率的にスクリーニングを行う手法。
スクリーニング調査とは、「ふるい分け調査」のこと。ネーミング作業の過程でたくさん作ったネーミングの中から、使えそうもないものをふるい落としていく、最初の作業である。ふるい落としの対象となるのは(A)完全同一称呼の生ずる商標と(B)超類似称呼の商標だ。
粗調査なので、
・時間をかけない
・金をかけない
ことがポイント。この条件の下でどこまでふるい落とせるかがサーチャーの技となる。
一般には特許庁のIPDLの称呼検索を使ってこのスクリーニング調査を行うらしい。「(A)完全同一称呼」の生ずる商標の検索のみなら、IPDLでもいいだろう。が、問題は、「(B)超類似商標」のふるい落とし。意外と知られていないが、この作業に重宝するのがアルファブランディーだ。
(B)ふるい落としにかけるべき類似商標ってなに?
類似として扱われるケースの多くは大きく3つに分類できる。すなわち、(1)一音相違する商標、(2)「A+B」に対する「A」あるいは「A+C」商標の存在、そして(3)「A+B」に対する「B+A」。
(1)一音相違で類似と扱われるケースは、濁音・清音の差異、子音共通、母音共通等、さまざまなパターンがあるため、スクリーニング調査の範囲を超えている。類似商標調査でみっちり調査・検討すべきだろう。
(2)「A+B」と「A」:よほど「B」の識別力欠如が明らかと思しき場合には、スクリーニングで「A」を探す方法も検討すべきだが、それ以外の場合には類似調査でみっちりと調べる方がベター。
(3)「A+B」に対する「B+A」は、必ずしも類似と判断されるものではないが、ネーミング採択する者にとっては、「B+A」があるなら初期の段階で知っておきたい。スクリーニングで是非とも拾っておくべきだろう。
「A+B」商標のスクリーニングの極意
・候補に上がったネーミングを構成するすべての要素を全部使った先行商標だけは
スクリーニング調査でヒットさせるべし。
例)「味の匠」(30類)を探す場合:
称呼 アジ
称呼 タクミ
国際分類 30
こうすると、「アジ」と「タクミ」を両方含んだ「30類」の商標すべてがヒット。つまり「味の匠」の他、「匠の味」「味と匠」「匠と味」「匠な味」「味な匠」が一気にヒットする。
「味の匠(アジノタクミ)」と「匠の味(タクミノアジ)」が類似かどうかは争う余地があるとしても、企業の担当者として、先行する商標「匠の味」があるとしれば「味の匠」は、余計な混同のトラブルを避けて採用を見送りたいと思う向きもいるだろう。たった一回の検索で、こうした商標をふるい落とすことができる。さらに、検索対象称呼と同一のもののみがヒットするので余計なノイズが一切ない。出力データを上から順番に吟味していけば良い。「確実に・みたいものだけ見つけ出す」ことができるのだ。
同じことをIPDLでやろうとすると結構手間がかかるのだ。
手順1.称呼検索で「アジノクミ」、区分30(完全同一を探すため)
手順2.出願・登録情報検索で商標「?味?」かつ「?匠」区分30
しかも、出願・登録情報検索は、称呼から検索することができない。つまり「味の匠」は拾えても「鯵の巧み」はヒットしない。 そこで、さらに
手順3.出願・登録情報検索にて「?味?」「?匠?」の代わりに思いつくかぎりの「アジ」「タクミ」の称呼が生じる文字(「鯵」「鰺」「阿字」「アジ」「AJI」、「巧み」「工」など)を順次組み合わせて検索。これが結構至難の技。しかもやればやるほど、自分の絞り出した知恵で十分なのか疑心暗鬼になってしまう。
そうなると、IPDLの使用料自体がいくら無料とはいえ、
1.時間はかかる
2.手間もかかる
3.時間と手間をかけるため、結果としてコストがかさむ
ということになってしまう。
アルファブランディーを使って、手軽にすっきりスクリーニング調査した方が、精神衛生上よくないか?