thomsonbrandy.jp 2.0.7(2008-10-18) トムソンブランディ事業部

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弁理士 木村三朗先生 による特別セミナー

トムソンブランディは去る1月16日(東京)、1月26日(大阪)に於いて特別知財セミナーを開催いたしました。演題は、弁理士・木村三朗氏の「普通名称化を防ぐ為の商標管理」と当社企画開発室長・飯塚哲朗の「“商標の今日的課題と将来展望”その後」でした。今回のセミナーは、木村先生のご高名もあり東京103名、大阪107名と多くの参加者を迎えることができました。ここでは、弁理士・木村三朗氏の当日の講演内容の抜粋を全6回にわたってご紹介いたします。
 

第1回 商標「正露丸」の事件に学ぶ商標管理(前編)

<差止請求事件について>
 平成18年7月大阪地裁にて原告:大幸薬品株式会社と被告:和泉薬品工業株式会社との胃腸薬に関しての不正競争行為差止等請求事件(大阪地裁平成17年(ワ)第11663号)の判決がなされた。(控訴中)
 原告は、被告商品は、正面図で(1)包装箱が直方体で地色は「橙色」(2)中央部に「正露丸」と赤字で大書(3)赤色の同心円の内に図形(瓢箪)(4)周縁に南天の葉の付いた房の囲い、その他各側面図に於いて類似し、原告の著名表示に“すり寄り行為”があったとしている。

写真1
原告製品
写真2
被告製品

また、原告は下記の所有商標により商標権の侵害も主張している。
 (1)「正露丸」  登録第545984号 1959年(昭和34年)12月16日登録
 (2)「SEIROGAN」登録第545985号 1959年(昭和34年)12月16日登録
指定商品は(1)(3)共に“クレオソートを主剤とする胃腸用丸薬”

 これらの主張に対し裁判所は、(1)原告の社名及びラッパの図柄を識別表示と一般消費者は認識している(2)「正露丸」「SEIROGAN」は普通名称と認定し、不正競争防止法の「商品等表示」に該当しない。また、原告の商標権は被告標章には権利が及ばないと判決をした。
なお、「正露丸」「SEIRIGAN」が、普通名称であるとの判断の論拠は以下の通り。
・ 昭和29年以降も「正露丸」等の名称で本件医薬品を販売する者が複数あり、その販売シェアーも無視できない割合を占めている。
・ 「正露丸」の語は正露丸の製造販売に携わる取引者の間では本件医薬品の一般的な名称として認識されている。

昭和52年以降正露丸の製造・販売を行う業者に対し「正露丸」の名称の使用を止めさせる措置を執ったのは1度しかなかった。

・ 原告は、宣伝活動において「正露丸」の文字とともに「ラッパのマーク」を強調している。

<過去の審判決に見る「正露丸」の歴史的経緯>
昭和46年9月3日東京高裁は昭和35年(行ナ)32号(昭和30年審判第170号の審決取消訴訟)において、『第455904号 普通書体で「正露丸」の文字に「セイロガン」の文字を振り仮名を付記した商標(25-4-30出願は無効である』と判断し、その論拠として
29-10-30登録)は医薬品に関しては普通名称であり、登録正露丸の歴史的経過と商標管理の状況を探っている。これによれば、・明治35年 中島佐一 が「忠勇征露丸」の方名で免許を受け「征露丸」の名称でクレオソート丸を発売(大幸薬品ホームページ、高裁判決はこの事実を認めるに足る証拠はないとしている)
・ 明治37、38年の日露戦争時陸軍(野戦長官)がクレオソート丸を創設しこれを「征露丸」と命名した
・ 明治38年 鳥栖製剤合資会社が「征露丸」を登録。第24208号 商品「丸薬」 後に中島佐一と共有
・ 大正15年(1926年)第24208号「征露丸」は「露西亜を征伐する」を意味し公序良俗に反するとの理由で登録無効とされた(大正14年抗告審判第3号、大正15年6月28日大審院)
・ 第24208号が登録無効になって以降の登録には「セイロ」「軍歌正露」「忠勇正露」「ゼンコクセイロ」「金鵄征路丸」「ナカジマセイロ」「明治正露丸」「中島正露丸」第454984号「正露丸」第454985号「SEIROGAN」「松葉正露丸」他多数散見される。
・ 昭和21年(1946年)柴田音治郎が大幸薬品(株)を設立し、「忠勇征露丸」の製造販売権を承継し、昭和29年に名称を「正露丸」に変更した(大幸薬品ホームページ)
・ 昭和22年以降他の業者が使用した標章に『○○正露丸』『××せいろ丸』『△△セイロガン』が多数使用されていた。
・ 厚生省薬務局は、製造許可申請に対して「征露丸」を「正露丸」と記載するように行政指導した。
・ 昭和29年の当時「正露丸」「せいろ丸」「セイロ丸」は「征露丸」と同一物を指す語として一般に認識されるに至った。(上記経過に基づき東京高裁が判断)

また、裁判所は商標管理の不徹底も普通名称化の大きな要因と指摘している。
・ 類似商標使用者に対する登録排除措置は(1)昭和27年「スミヨシセイロ」に登録異議申立(2)昭和28年「軍歌正露/グンカセイロ」「ゼンコクセイロ」「金鵄征路丸」審判
                    
により登録無効にした。しかし登録排除が不徹底で『○○正露丸』『××せいろ丸』『△△セイロガン』にはノーアクションで登録されたままである。
・ 使用差止め排除措置も「三和正露丸」「強セイロ丸」など大阪付近の業者に限られ、全国的には行われず、需用者一般の認識を改めるに至るほど徹底したものでなかった