知財専門家としてバンコクに長期滞在し、タイ国内やベトナムの各地で知財セミナーを開催したユニークな経歴を持つ。東南アジア暮らしもすっかり板についた2005年春に帰国、都内に商標専門事務所を開設。
「常夏の国もよかったけれど、やっぱり日本はいいねえ。
過ごしやすいし、モノもサービスも豊富だし。」と日本のよさを満喫中。
豊崎国際特許商標事務所
豊崎玲子 http://toyosakiassociates.web.infoseek.co.jp/Home_Japan.htm
第7回 拒絶理由を受け取ったら その2
常夏のタイから帰国してはや2年。
意外と暑くて厳しい日本の夏には辟易し、一時は食欲すらも落ちた気がする。
が、秋の訪れと共に胃腸はよみがえり、もはや絶好調!「秋刀魚も美味い、お酒の種類も豊富。やっぱ日本の秋はいい」。とはいえ、東南アジアも忘れきれず、時々理由をつけては里帰り(?)。
「最近、日本映画やドラマのコピーも出回り始めたよ」という巷のニュースも聞きつけたので、調査・視察を口実にまた行ってこようかと…(買ってくるわけではありません。念のため)。
ここから本題
第7回 拒絶理由を受け取ったら(その2)
前回、「拒絶理由を受けたら?どうする」の虎の巻にて、3条1項6号に該当するとの拒絶理由を受けた場合を例に挙げて説明した。いわゆる識別性に関する拒絶理由を受けた場合の対処法だ。
今回は、「先行する商標と類似する」との拒絶理由を受けた場合の資料の探し方を考えてみる。
「先行商標と類似する」との拒絶理由を受けたら、まず自分の出願と先行商標の(1)商標を確認、(2)指定商品の確認を使用。もっともこれは虎の巻以前の問題。
意外とよくあるのが、「重複する商品(役務)は実は使用予定のない商品だった(つまり、念のために権利化できるんだったらしておこうという程度のもの)」という場合。
よーく考えて、いらないものなら削除してしまったほうがベターだろう。どうせ取っておいても不使用取消審判の対象になるのがおち。費用対効果を考えるべし。
商標類似のパターン
商標の類否は、外観、称呼、観念の三要素を持って判断される。
過去の経験からいうと圧倒的に「称呼」の類否が争われる例が多い。
そこで今回は称呼類似と判断されたケースに焦点を絞って考えてみる(観念、外観についてはまた別の機会に)。
称呼類似と判断されるパターンは大きく分けてたった二つ。
パターン1.各商標から生じる称呼を比べると、一音あるいは二音相違である。
パターン2.いわゆる「A+B」商標と「A(もしくはB)」商標の関係にある。
手元の商標(本願と引用商標)を比べてほしい。

(図1)
上記表に書き込むと、ほら、一目瞭然。
パターン1の論点かパターン2の論点か、分かるだろう。
パターン1とパターン2では若干論法が異なるので、まずパターン1から説明する。
パターン1の場合のお役立ちデータベースツールは「類否叢集」。
過去の豊富なデータが蓄積されているこのデータベースは便利だが、課金対象データベースである以上、操作する前に、「欲しいデータはなにか」を明確にしてから使うのがコツ。
(1)まずは本願商標と、引用商標の称呼を比較分析。
「えーっ。さっきもやったじゃん(図1)」と思うことなかれ。今度はもう少し緻密に分析する。これが余計に課金されないコツなのだ。

(図2)
課金されないコツは、きちんと書いてみて、音の数、アクセントの位置、長音点を確認するところにある。
ここまでやってから「類否叢集」にアクセスだ。
類否叢集データベースは音の違いを直接入力することができない。
「カール」と「アール」の類否が争いのポイントだと分かっていても【「カ」と「ア」の相違判断審決のみ】を直接拾ってくることはできないのだ。
その代わりに使うの「行」。「カール」と「アール」の意見書材料が欲しいこの場合には「ア行」と「カ行」の音の違いを入力することになる。
検索条件入力画面には、音1、音2の項目のほか、多数の空欄記入項目があるので、ついつい記入してしまいがち。
図2の表を作った方ならなおさらだろう。
が、しかし、ここではじっと我慢。赤い枠内のみを記入する。それ以外に手を触れない。これぞ節約検索のコツ。

(図3)
ここで検索キーを押す。これは課金対象。出力結果表示で1件課金されることになる。
でてきたリストは「母集団」。ここから一つずつ欲しい審決データをピックアップすればよい。
母集団にたくさんのデータが含まれていて目で絞込み作業を行うのが大変ならば、「絞り込み」検索キーを使ってデータの数を絞ってみよう。
残念ながら、この段階でも自動では「カ」と「ア」のごとき相違する音に関する審決の絞込みは不可。
代わりに相違音の位置、あるいは音数、審判種別で絞込みが可能だ。そこでさっき作った図2のメモが役に立つ。
ひとめで何音?前方一致?公報一致?が明らかとなる。
なお、音数で絞りこむなら欲しいデータのプラスマイナス2音程度を目安にしよう。
審判種別で絞り込みをかけるならば、拒絶種別が妥当だろう。
異議、とりわけ付与後異議ではノイズというべきデータもたくさんピックアップされてしまうからだ。
もし、しっくりくりデータが見つからなかったら?
お望みのものがそのままずばり手に入らない、そんな時もあるだろう。
たとえば「リ」と「レ」の相違音による類否判断審決は多い。
が、「ベ」と「ボ」の相違音の争い例や「チ」と「ツ」の争い例など、めったに審決でも見ないのに、手元の拒絶理由でお目にかかってしまったという場合。
こうした場合には、直接的な材料ではなく、審査基準に沿ったものを探してみよう。
図2の表をもとに、自分の案件が以下のどれに当てはまるのか考える。
□本願商標と引用商標の称呼はともに同数音である場合
□相違音は母音
□相違音は同行音
□清・濁・半濁音の相違
□比較的長い称呼でその他の1音相違
□本願商標と引用商標の称呼の音数は一致しないが1音相違であることは事実
□弱音か弱音の有無
□長音・促音の有無/長音か促音 長音か弱音の差
□比較的長い称呼
□拗音と直音の差
□外来語発音と他方の母音・子音近似
□母音又は子音が近似
同行、同音の他の音「ア」と「カ」で見つからなければ「ア行」と「サ行」の同列音で探してみるなど。
上記リストに当てはまるいわゆる「親戚筋」を探してくればよい。
審決判断、出願人の主張はきっと意見書作成の約に立つ。
急がば回れ。じっくり本件商標と引用商標を観察したら、類否叢集で探してみよう。
きっと参考になる審決が見つかるはずだ。パターン2についてはまた次回。