トムソンブランディは去る1月16日(東京)、1月26日(大阪)に於いて特別知財セミナーを開催いたしました。
演題は、弁理士・木村三朗氏の「普通名称化を防ぐ為の商標管理」と当社企画開発室長・飯塚哲朗の「“商標の今日的課題と将来展望”その後」。
ここでは、当社企画開発室長・飯塚哲朗の「“商標の今日的課題と将来展望”その後」の講演内容の抜粋を全4回にわたってご紹介いたします。
第6回 商標の今日的課題と将来展望のその後(4)
■経営統合・企業合併(M&A)における商標問題
ある日、突然企業合併や経営統合(M&A)が発表される。 経営の根幹に係わる事柄から高度のトップシークレットで極々限られた重役しか事前情報を知らされない。発表は社内外同時に行われ、統合日までの短日数のうちに?新会社又はホールディングカンパニーのロゴ選定と商標登録?統合企業の商標権の名義変更など多くの対応すべき事項が多い。
以下にM&Aにおける商標問題を検討してみたい。
1.商標問題ではないが、ドメインの事前登録は怠り無く行うことが重要である。ドメイン登録は費用安価で即時登録受けができるこたから、発表当日には恣意的な申請者による剽窃登録される危険性が高く、無用なトラブルの生じることを防がなければならない。
2.新社名・社標ロゴの取扱
1)新たに選定される社名・社標ロゴ(ハウスマーク)は、国内外共に登録できるものでなければならない。
2)出願を先行させ、ブラインド期間明けの再度の調査は必ず必要である。
3)出願を先行させるために、旧社名企業で出願し新会社設立後に名義変更が必要となる。
4)このように出願人の名義が変遷することと、外国出願の時期とルートの選択(出願時期、ダイレクトorマドリット協定プロトコルの出願ルート、優先権主張の利用有無)が重要で、《1》出願 《2》ブラインド期間再調査 《3》名義変更 《4》優先権主張 《5》外国出願(ダイレクトとマドプロ)の流れが最適と思える。ただし、このケースの場合は優先権主張期間の関係から『出願日』→『新会社登記日(それ以降に名義変更が可能)』→『外国出願日』が6ヶ月間のオンタイムのスケジュールである必要がある。
5)前記スケジュールに乗せることができない場合には、その都度の最良の出願・権利化方策を検討すべきである。
3.所有商標の棚卸
1)ホールディングカンパニー又は統合会社に名義を変更する場合には、既に不要となった商標までも名義変更する必要はなく、コストの低減に努めなければならない。
2)維持要否の明確な基準を改めて見直し、全権利を使用依頼部門に照会し評価の結果に基づき名義変更すべき商標を決定する。
3)名義変更手続を行う案件については、特に古い権利については『商号(以前に社名変更があれば)』『住所』などが、現在のものと一致しているか?のチェックが必要である。
4)ホールディングカンパニーと事業会社では、代表者が重複するケースが散見され、重複する場合には、会社法356号及び365号の『取締役会承認書』が必要書類となる。
5)その他を含め作業フローと留意点を示すと次図の通りである。
4.名声が残存する旧社名マークの第三者の不正登録と不正使用の排除
1)名声が残存する旧社名マーク・ロゴの管理ポリシーを決め、維持・放棄の対応をマニュアル化し一律に取扱た方が良いように思える。
2)トムソンブランディが特許庁委託研究平成17年度商標出願動向調査のアンケートで、過去10年以内に社名変更を行った企業72社のうち“更新登録と再出願とで対応する”との合計が37社あり、52.1%の企業が商標権を維持する方向での対応をとっている。
3)次に他人が旧社名・ロゴと同一又は類似商標の出願が行われた場合で、拒絶該当条文として
・4-8号(他人の肖像又は他人の氏名…。承諾をえているものを除く)
・4-10号(他人の業務にかかる…)
・4-11号(出願日前の登録商標・・)
・4-15号(他人の業務と混同・・)
・4-19号(他人の業務・・表示するものとして広く認識…不正目的…)
・4-7号(公序良俗違反)
が考えられる。
具体的検討を加えると他人とあるは、“現存する他人”を指称するもので、既に当該旧法人は現存しないことから拒絶理由には該当しない。また、11号は不使用取消の懸念を抱えている。従って、係争場面では役に立たないことも最悪予想される。(それ故に3年おきに再出願する企業も生じている。)強いて挙げると、消費者を欺瞞させる不正行為を想起させるような出願であるならば、7号の主張する程度と弱い保護でしかないのが現状ではなかろうか?
4)ついては、M&A時代の課題の1っとして、名声が残存する旧社名マークの第三者の不正登録と不正使用に関しての立法措置が必要になるかもしれない。
以上