地ビール研究家でもある西本幸男先生(特許庁の審判長)の“地ビール研究”をご紹介いたします。
■西本 幸男 先生
特許庁 審判部 34部門 審判長
国産地ビール愛飲会 主宰
日本地ビール協会会員 ビアテイスター
GOODBEERCLUB会員(2007年度 監査)
第1回 序章
これからしばらくの間、地ビールの世界にお付き合いください。
地ビールの語源は定かではないが、一般的には、1995年に年間最低醸造量2000klが60kl(発泡酒免許だと6kl)に緩和され、一時期300を超すメーカーが誕生し、ここで造られたビールが「地ビール」と呼ばれるようになった(国税庁の統計でも地ビールという言葉が出てくる)。ビールは、麦酒といわれるとおり大麦を発芽させた麦芽(モルト)を主原料とし、これに香りや苦みの元となるホップ、それと水で作られる(ホップは、防腐剤の役割もはたす)。地元のものは水だけで、後はほとんど輸入品である。それなのに何で地ビールなのだろうか?その昔、生ビールという呼び方が始まったとき、それまでのビールは、酵母の発酵を止めるために加熱処理していた。フィルターの性能が向上し、酵母を完全に除去できることにより、加熱処理しなくて良くなり、そのとき付けた呼び方が、日本酒の生酒に習って生ビールという呼び方になったのです。地ビールも、その時と同じように、日本酒の地酒に習って地ビールという呼び方をしたのだと思われる。
地元の産物を使っていないのだから、地ビールと言うより、手作りのビールということで、本当は、クラフトビールと呼びたいところだ。
話は唐突に変わるが、地ビールの税金は、期限付きで若干の優遇がされているが、基本的には大手のビールと同じ1kl当たり22万円かかる。
日本の酒税税収は平成15年1兆6,009億円であったが、この内ビールが8,764億円(約55%)を占め、発泡酒、第3のビールが雑酒の扱いとなっているため正確な数字はわからないが、雑酒の税収の3,182億円を加えると、酒税の7割をビール及びビール風飲料が稼いでいる計算になる。だから、稼ぎ頭のビールの税率は下がることはないと思う(発泡酒、第3のビールの税率が上がる可能性が高い)が、全国の地ビールメーカーの総生産量を合わせても、たぶん大手のビール(雑酒をのぞく)の0.1%にも満たないと思われる地ビールの税金を10分の1程度に優遇しても、税収に何ら影響を及ぼさないのではないかと思う。
地ビールのイメージは、高い、日持ちしない、味が好きになれないなどいろいろ聞かれるが、味は後におくとして、高いについては、普通のビールの2倍から3倍するから確かに高い、これは、税金だけでなく、原料費のコストも割高につくからである。税金の分だけでも安くなれば、少しは安くできるかな?と思っている。
日持ちしないは、酵母が完全に除去できないからであって、短いものだと賞味期限が2週間なんていうものもある。生きた酵母が残っていることは、腸にも良い。(醸造者の中には、毎日味見していて痛風が治った?という人もいる)
味については、多くの人が大手のビール、ジャンル的に言えば、ラガータイプ、いわゆるピルスナーというもので、しかも、副原料として、米、コーンスターチが入ったものにならされてきたから、違和感を覚えるのも無理はない。ただ、米やコーンスターチ等の副原料を含まない、いわゆるモルト100%といわれるビール(サントリーのモルツ、サッポロのエビス等)も徐々に広がり始めているが、地ビールの場合ほとんどがモルト100%といっても過言ではない。
味が違うのは、モルト100%のせいだけではない。元々ビールにはいろいろなタイプがあり、大手の喉ごしを重視したビールの味にならされていて、飲んだことのないタイプのビールに出会ったときに拒否反応を示しているだけと思われる。中にはベルギービールのように、果汁やコリアンダー等のスパイスを入れたもの(日本でいえば発泡酒に属する)があり、独特の風味を醸し出している(もっとも、ここまでくると好き嫌いがはっきり出る)。それは別にしても、ビールの代表的なタイプを何種類か、是非一度試していただきたい。
詳しくは、次章の、ビールのタイプに譲るとして、序章を幕とする。